高齢者住宅の内装ではバリアフリーが大切!設備ごとのポイントを解説
2023/03/17
コラム

高齢者住宅の内装工事を検討しているが、どんな内装が適しているのか分からない十悩みの方もいるのではないでしょうか。

高齢者住宅の施工にはバリアフリーが大切というのは大まかに理解できますが、その詳細となるとイメージがしにくいものです。高齢者住宅では、各空間において求められる配慮が異なるため、設置する設備や注意すべき点も異なります。

この記事では、高齢者住宅の種類や住みやすい内装のポイント、特に注意すべき設備などを解説していきます。高齢者住宅の内装にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

高齢者住宅の種類

「高齢者住宅」という言葉をよく耳にしますが、この言葉には明確な定義はありません。意味としては「高齢者の暮らしに配慮した住宅」または、「高齢者専用の住宅」という理解が一般的です。

そしてこの高齢者住宅は、大きく下記の3つに分類できます。

  • サービス付き高齢者向け住宅
  • 高齢者専用賃貸住宅
  • シニア向け分譲マンション

それぞれに明確な違いがありますから、その違いを理解しておくことは大変に重要な要素となります。

サービス付き高齢者向け住宅

高齢者を対象として提供されている住宅で、主に民間企業が運営を行っているのが「サービス付き高齢者向け住宅」です。高齢者の生活を円滑にするために配慮されている住宅となっています。

サービス付き高齢者住宅は、「自立~軽度の要介護」と認定された方が入居可能です。つまりは、比較的元気で概ね身の回りのことが自分でできる方が対象の住宅といえます。

そのため、老人ホームなどと比較をすると自由度が高く、入浴時間の制限や外出の制限などがありません。自宅での生活に近い環境で生活できます。生活相談員が常駐していますので、問題が生じた際には対応してくれて安心です。

高齢者専用賃貸住宅

60歳以上の高齢者が入居するために作られた賃貸住宅を「高齢者専用賃貸住宅」といいます。高齢者の入居を前提に建設されているため、高齢者に配慮されたバリアフリー構造になっていて、家賃保証制度があるのが特徴です。

生活は概ね自立していて問題はないが、何かあったときのために対応してくれる環境での生活がしたいといった場合に利用する住宅と考えると良いでしょう。

また、介護が必要な場合には、外部事業者と契約をすることで介護サービスの利用も可能です。サービス付き高齢者住宅と異なり、建物の規定やサービスの提供の義務がありません。それゆえに、事業者によっての差が大きいという実情があります。

シニア向け分譲マンション

60歳以上の高齢者の入居を前提とした分譲マンションを「シニア向け分譲マンション」といいます。高齢者の入居を前提としているのでもちろんバリアフリー構造です。物件によっては、フィットネスや娯楽施設、図書館などが併設されています。

食事の提供や室内の清掃などの生活支援サービスが有料で提供されているといった特徴があり、介護サービスを利用する場合は別途契約を結ぶことで利用が可能です。

また、賃貸契約ではなく所有権契約となるため、相続や売却もできて、分譲である分自由度が高いといえます。

高齢者住宅で内装にこだわるべき理由

「快適な生活を送りたい」というのは、万人に共通した考え方といえるでしょう。しかし、年齢を重ねる上では、どうしても体力の衰えを感じるものです。若いときと歳を重ねたときでは「快適な環境」というものが異なるので、年齢に合わせた内装にしなければ、利用者の満足度は高くなりません。

例えば、若い人はちょっとした段差をさほど気にしませんが、高齢になれば度々躓く要因になってしまいます。入浴する際の湯船に入る動作も高齢になると片足立ちが大変になったり、トイレでの座るといった行動が意外ときつかったりと変化をしていくのです。

それゆえ、高齢者住宅では、生活を快適にすることを目的に内装に配慮を持たせた「こだわり」が必要となるのです。

高齢者住宅では住みやすいバリアフリーが基本

高齢者住宅では、住みやすさに配慮したバリアフリーを取り入れるのが基本といえます。バリアフリーという言葉はよく耳にしますが、何となくでしか理解ができていない方も多いでしょう。バリアフリーは、「生活の上で支障となるものを取り除くこと」を指します。

高齢者が生活をする上では、段差や階段などが支障になりますし、床の構造や備品の設置なども生活の障害になりえるのです。

高齢者住宅では、高齢であるがゆえに障害となりえるものを極力排除した、バリアフリーを取り入れるのが大切といえます。ここでは、バリアフリーのポイントを見ていきましょう。

  • 段差をなくした構造に
  • 転倒を予防するデザインに
  • 建物内の温度差をなくして快適に

順番に解説していきます。

段差をなくした構造に

バリアフリーの基本といえるのが、段差をなくした構造です。段差があると高齢者が躓いてしまいやすく、転倒事故を誘発する要素となります。また、車いすでの生活が必要な高齢者にとっては、段差が快適な生活への障害となるのはいうまでもありません。

普段私たちの生活する住居では、この段差が意外と多いのです。玄関だけでも、「たたき」と呼ばれる靴を脱ぐ部分、「上がり框」と呼ばれる段差を付けた部分があります。もともとは内と外を区別する意図の構造ですが、この段差が高齢になると障害になるのです。

その他にも、各部屋の境の段差、浴室の段差など、段差のない構造が高齢住宅においては理想の構造となります。

転倒を予防するデザインに

バリアフリーに転倒を予防する構造は欠かせません。転倒はどのような場面で、どのような要因で起こるのかを理解し、予防できるデザインにしましょう。

転倒の主な要因は、高齢による体力の低下や注意力の低下などです。先ほども解説したようなちょっとした段差やカーペットの段差、電気コードも転倒の要因になります。また、靴を履く、ズボンを脱ぐといった片足立ちを要する場面でも転倒は起こりやすいです。場面に合わせて転倒を予防する工夫を取り入れるようにしてください。

建物内の温度差をなくして快適に

寒暖の差が激しいと、「ヒートショック」が起きる可能性があります。ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所へ移動する際に、体温が奪われないように血管が収縮して血圧が上昇することで発生するものです。

さらに、入浴の際にお湯に浸かって温まると反対に血管が広がり、血圧が下がります。短い時間にこのような変動が起こると立ち眩み、めまいの要因となるのです。

こういった事態を避けるためにも、建物内の温度差をなくすことが重要といえます。建物全体の空調が整っていると、居室は暖かいのに廊下が寒いといった不満も生まれなくなるのです。

高齢者住宅の内装で特に注意すべき設備は?

ここからは、高齢者住宅の内装で特に注意すべき設備について解説していきます。それぞれの設備ごとに注意点を解説していくので、参考にしてみてください。

  • トイレ
  • 浴室・洗面
  • キッチン
  • リビング・ダイニング
  • 玄関
  • 階段・廊下

順番に解説していきます。

トイレ

時間的には短いかもしれませんが、日常でも使用する機会が多いのがトイレです。トイレでは手すりを設置すると、立ったり座ったりする際に掴んで体制を維持するための補助をしてくれます。

また、トイレは入り口を広くして、通常の一般住宅のトイレよりも広めの空間を取るようにしてください。高齢者住宅では、介助者が一緒に入る必要があったり、狭いトイレでは車いすでの出入りが難しかったりします。広めの空間でスライドドアで入れるトイレにすると、車いすでの出入りもしやすくなるでしょう。

さらに、トイレとの境に段差を作らないようにすると、躓いたり車いすで引っかかったりする心配がなくなります。

浴室・洗面

浴室では、湯船に浸かる際にまたいで移動しなければいけません。そのときには片足立ちになるため、手すりを設置してバランスを保てるようにしましょう。転んでも大丈夫なように床を柔らかい素材にすると、さらに安心度が高まります。

浴室の場合でも、転倒防止のために更衣室と浴室の境目の段差をなくすと転倒のリスクを軽減することが可能です。

洗面では、洗面台の高さが課題となります。洗面台は一般的に立って使用するものですが、高齢になると立位を維持するのが難しいという人も少なくありません。そのため、座って利用できる洗面台も設置しておくと良いでしょう。座位のまま使用できるので、転倒の予防になるだけでなく、体力的な負担も軽減できます。

さらに、浴室、洗面ではヒートショック対策も行っておきましょう。寒暖の差が生じないように、浴室暖房の設置するなどがポイントになります。

キッチン

キッチンも立って利用するのが一般的ですが、高齢者住宅となれば話は別です。座ったままで使用できるキッチンがあると、高齢者への負担が軽減できます。その際には、電灯のスイッチや蛇口までの距離など、さまざまな点に配慮しなければいけません。各メーカーから高齢者向けのシステムキッチンも販売されているので、使いやすさなどを考慮しながら選ぶようにしましょう。

また、キッチンではコンロにも注意する必要があります。ガスコンロの場合は火災の要因になりえるのでIHの使用が理想的といえますが、高齢の方はガスコンロに慣れていてIHコンロを使い慣れていないという課題もあるのです。ガスコンロを採用する場合は、火災に対する予防策を十分に講じる必要があります。

リビング・ダイニング

リビングやダイニングといった空間は、特に長い時間を過ごすスペースです。そのため、高齢者が落ち着けるような快適な空間にしましょう。

高齢の方は、立ったり座ったりする際に、自然と体勢を維持する補助をするために、近くのものに体重を預けたり掴まったりするものです。その際に、テーブルがズレてしまったり倒れてしまったりすると、怪我の要因になりかねません。テーブルを購入する際には体重をかけても問題のないものを選ぶなど、1つ1つの家具を選ぶのにも、高齢者の目線になって選ぶ必要があります。

また、電気コードなども躓く原因になるので、配置する家電とその電源コードの配置には十分に配慮してください。

玄関

玄関は段差が生じやすい場所なので、この段差を取り除くことが理想です。さらに、靴を履く、脱ぐといった行為が行われる場所ですから、座って行えるような構造にするのが良いでしょう。靴を履いたり脱いだりするときに掴まれるように、手すりを設置しておくのもおすすめです。

また、一般的なマンションでは扉が重く、自動的に閉まる構造になっているものも多いです。しかし、重い扉は高齢者の方が開けるのが大変ですし、自動的に閉まってしまうとゆっくり通ることができません。車いすの方が通るのも難しいので、玄関扉にも注目するようにしましょう。

階段・廊下

階段は自ずと段差が生じる部分なので、階段のある住宅の場合では手すりを設置するようにしましょう。さらに、階段で足を滑らせないように滑り止めを設置するのもおすすめできます。壁面が緩衝材になるような構造にしていると、転倒した際の怪我をするリスクを軽減できる可能性が高いです。必要であれば、家庭用の階段昇降機の設置も検討してみてください。

廊下は床面を滑りにくい構造にして、手すりを付けると高齢者が歩く際にサポートの役割をしてくれます。床材には転倒した際のショックを吸収する素材のものもあるため、素材にも注目して選んでみましょう。

内装工事を依頼する業者選びのポイント

高齢者が住みやすい環境を整えるためには、内装にさまざまな手を施さなければいけません。高齢者にとって快適な空間を用意したいという場合は、慎重に業者の選定を行う必要があります。最後に、内装工事を依頼する業者選びのポイントについて見ていきましょう。

  • 高齢者住宅の施工実績がある
  • 見積もりを丁寧に行ってくれる
  • 担当者の態度や対応が良い

1つずつ解説していきます。

高齢者住宅の施工実績がある

業者選びの際には、その業者に高齢者住宅の施工実績があるかどうかを確認しましょう。今回解説したように、高齢者住宅ではさまざまな点に注意しなければいけません。しかし、実績がない業者を選んでしまうと、そういった点に細かく配慮した内装デザインにしてもらえないというリスクがあります。

施工数が多ければ多いほど経験が豊富で、より希望に近い施工を行ってくれる可能性が高まるでしょう。業者の実績はホームページなどから確認できる場合が多いので、お問い合わせをする前にチェックしてみると良いです。

見積もりを丁寧に行ってくれる

業者と契約をする前には見積もりが必須です。そのときに、見積もりを丁寧に行っているか、詳細な見積もり内容を提示してくれるか、といった点に注目しましょう。大雑把な見積もりでは、どの部分にどのくらいの費用がかかっているのかを把握できません。相場よりも高い金額になっている可能性も考えられるので、明確な見積もりを提示してくれる業者が安心です。

また、高齢者住宅の内装工事にかかる費用の相場を知るためには、複数の業者に見積もりを依頼してみてください。料金や内訳、サービス内容などを比較して、自分に合ったところを選びましょう。

担当者の態度や対応が良い

見積もりを依頼する際には、基本的に実地を見てから正確な見積もりを提示してもらう形になります。その際に担当者とのやりとりが発生する場合は、担当者の態度や対応にも注目してみてください。

高額の施工を依頼するため、信頼できない業者にお願いをするのは不安ですよね。丁寧に対応をしてくれるか、疑問点や悩みにも答えてくれるかなど、契約前に自分が信頼できるかどうかを判断しておきましょう。

まとめ

高齢者住宅では、住みやすさを重視したバリアフリーな構造が求められます。例えば、一般住宅よりも広い空間のトイレ、座ったまま利用できるキッチン、廊下や階段などへの手すりの設置などです。

若い人と高齢者では「快適な空間」に対する認識が異なります。高齢者の目線に立って、使いやすさを求める必要があるのです。

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