内装工事の耐用年数とは|資産の耐用年数や減価償却との関係を解説
2023/06/02
コラム

内装工事を行う際、その耐用年数について考慮したことがあまりないという人もいるのではないでしょうか。特に、事業の成長や変化に合わせてオフィス改装を考えている人、新しく店舗を開業しようと思っている人は、内装工事の耐用年数が重要なポイントとなります。

今回は、そんな内装工事の耐用年数に関する重要な情報について解説していきます。内容別の耐用年数の違い、自社所有建物と賃貸物件の内装工事の耐用年数の違いなど、幅広く紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。

内装工事の耐用年数とは

内装工事の耐用年数とは、施工した内装が機能を持続すると予想される期間のことです。内装工事には、壁紙の貼り替え、床材の貼り替え、照明器具の取り替えなどが含まれ、その耐用年数は工事内容や使用状況により異なります。

一般的には、修繕費として計上される内装工事の耐用年数は10年とされていますが、賃貸物件などの場合は、契約期間に応じた耐用年数とすることもあります。したがって、内装工事の耐用年数を決定する際には、具体的な工事内容や物件の使用状況を考慮することが重要です。

耐用年数と減価償却の関係性

耐用年数は、内装工事にかかった費用を計上する際の減価償却の基準となります。具体的には、耐用年数の間で内装工事費用を等分し、毎年一定額を経費として計上するのです。これを「定額法」といいます。

例えば、内装工事に500万円かかったとしましょう。耐用年数が10年と定められていた場合、毎年50万円を経費として計上します。これにより、一度に大きな費用が発生するのを避け、経済活動を平穏に続けられるよう配慮されているのです。

内装工事に関する資産の耐用年数

内装工事に関する資産とは、壁紙、床材、照明器具など、内装工事により新たに設置または改装されるものを指します。これらの資産の耐用年数は、その使用状況や耐久性により異なります。

内装工事

内装工事の一部として行われる床材の工事に関しては、一般的にその耐用年数は15年とされています。壁面材や天井材、照明器具、エアコンなどの設備はそれぞれ耐用年数10年、ドアや窓などの内装建具については耐用年数20年です。

これらの数値は一般的なものであり、具体的な数値は使用される素材や品質、使用状況によって変動することがあります。

これらの耐用年数は、内装工事の費用を計上する際の減価償却の基準となります。例えば、床材の工事に100万円かかった場合、その耐用年数が15年であれば、毎年約6.7万円を経費として計上することになるのです。

内装工事の費用については、「内装工事にかかる費用相場を業種・物件状態ごとに詳しく紹介」の記事で解説しています。

電気機器

照明器具の耐用年数は一般的に5年とされています。スイッチやコンセント、電話・インターホンの耐用年数は10年です。また、電子レンジ、電気ポット、トースターといった厨房機器の耐用年数は5年、換気扇の耐用年数は10年とされています。これらの耐用年数は、各機器の一般的な耐久性や、使用上の安全性などを考慮したものです。

内部造作物

内装工事によって設置された、または作られた内部造作物は、設置した建物の耐用年数に準じることが多いです。例えば、オフィスの内装工事において設置される作り付けの家具やパーテーションなどは、これらを1つにまとめて「建物」の勘定科目に仕訳されます。

これは、これらの内部造作物が建物の一部として機能し、その建物の使用目的に直結しているからです。そのため、これらの内部造作物の耐用年数は、建物自体の耐用年数と連動して考えられます。

ただし、建物の構造や、その建物が果たす目的によって、耐用年数は異なる場合もあります。例えば、同じ鉄筋コンクリート造の建物であっても、飲食店用の建物の耐用年数は34年なのに対し、事務所用の建物では50年と大きく異なります。

自社所有建物と賃貸物件の耐用年数の違い

自社所有の建物と賃貸物件では、耐用年数の取り扱いや期間が大きく異なることがあります。ここでは、自社所有建物と賃貸物件の耐用年数の違いについて詳しく解説していきます。

自社所有建物の内装工事

自社所有の建物の場合、建物が新築であれば通常の耐用年数が適用されます。しかし、中古の建物の場合は、すでに一部の使用可能期間が経過しているため、その残りの使用可能期間から耐用年数を計算することになるのです。

建物の耐用年数は、建物の目的や構造によって大きく変わります。例えば、鉄骨造の建物は、木造の建物と比較して長い耐用年数を持つのが一般的です。

構造ごとの耐用年数は国税庁のホームページに詳しく載っているので、そちらを参考に自社所有の建物の内装工事に関する耐用年数を適切に把握し、減価償却の計算を行うようにしてください。

賃貸物件の内装工事

賃貸物件の内装工事の場合、一般的にはその耐用年数は10年から15年とされています。これは、賃貸物件の契約期間や建物の使用状況によるものです。

また、特定の条件が揃っている場合には、賃借期間を耐用年数として計算できます。具体的には、賃借期間の定めがあって賃借期間の更新ができない、有益費の請求または買取請求をすることができないなどです。これらの条件が揃っている場合、内装工事にかかった費用は、賃借期間にわたって均等に経費計上されます。

内装工事の減価償却の勘定科目と計算方法は?

内装工事は、社員の労働環境を改善し、生産性を向上させるための重要な投資であり、その経済的な影響は長期にわたって及びます。しかし、その経済的な影響を適切に会計処理するためには、内装工事の減価償却に関する知識が必要です。

内装工事における支出の勘定科目

内装工事における支出の勘定科目には工事費用、減価償却費、販売費及び一般管理費、改装費用があります。

まず、工事費用は文字通り工事に必要なコストであり、内装工事の基礎となる費用です。具体的には、内装工事の人件費や資材費、設備費などが挙げられます。

次に、減価償却費は、内装工事で設置された設備や建材の価値が時間とともに減少することを反映した費用です。耐用年数に応じた一定の割合で経費として計上されます。

また、販売費及び一般管理費とは、店舗のイメージアップなどに使用される費用のことです。これらは直接的な内装工事とは異なりますが、店舗の魅力を高めるために重要な要素となります。

最後に、改装費用は内装工事による改修費用です。これは、既存の内装を改修・改装するために発生する費用であり、これも内装工事の一部として計算されます。

内装工事の減価償却の計算方法

内装工事の減価償却の計算では、まず始めに資産の取得価額を決定しましょう。取得価額とは、資産を取得するために支払われた金額、つまり内装工事にかかった費用全体を指します。

次に、資産の残存価額を決定してください。残存価額とは、資産の耐用年数が経過した後に残る価値のことを指します。通常、建物や設備の場合、残存価額はゼロとされることが多いです。

その後、償却期間を決定します。償却期間とは、資産の価値を消費する期間のことです。内装工事においては、工事によって設置された設備や建材の耐用年数が該当します。

最後に、取得価額から残存価額を引き、その差額を償却期間で割ることで、年次の償却費を計算することが可能です。この償却費が、各期間における減価償却費となります。

内装工事の減価償却の計算例

計算方法を理解したところで、具体的な例を用いて詳しく見ていきましょう。例えば、内装工事による資産の取得価額が2,200万円、耐用年数が20年、この資産の残存価額を200万円と考えた場合、次のような計算になります。

まず、取得価額から残存価額を引くと「2,200万円 - 200万円 = 2,000万円」となり、これが償却すべき資産価額です。次に、この償却すべき資産価額を耐用年数で割ります。すなわち、「2,000万円 ÷ 20年 = 100万円/年」となるのです。

したがって、この内装工事資産の年間の減価償却費は100万円となります。

内装工事の減価償却における注意点

内装工事の減価償却には、一見すると見逃してしまうような細かな点があるので、特に注意が必要なポイントをピックアップして紹介します。

  • 改修工事
  • 原状回復工事
  • オフィス移転時

それぞれについて具体的に解説していきます。

改修工事

改修工事は、工事内容によって工事費用の処理方法が異なるケースがあります。具体的には、工事が固定資産として計上される場合や、必要経費として計上される場合が挙げられます。

固定資産として計上されるのは、工事が固定資産の価値を向上させることに直接寄与する場合です。例えば、資産の価値や利用可能性が向上するような改修工事は、資本的支出とみなされ、固定資産として計上されます。

一方、維持管理や原状回復のための工事とみなされる場合は、必要経費として計上することができます。これは、資産の日常的な維持や修繕に関わる工事です。

改修工事については、「改修工事の種類は?修繕工事との違いやメリットも合わせて紹介」の記事で詳しく解説しています。

原状回復工事

原状回復工事は、建物や内装の定期的なメンテナンスや修繕を行うために行われるもので、修繕費に該当します。原状回復工事は経費としての計上が可能ですが、仕訳を行う際に原状回復費用であることを明記しておく必要があるので、注意してください。

これにより、会計処理上の正確性と透明性が確保されます。原状回復工事の費用を適切に計上することで、資産の状態を維持し、将来的な価値の減少を防げるでしょう。

原状回復工事における仕訳時には、会計基準や税法の規定に従って正確な処理を行う必要があります。また、関連する文書や証拠を適切に保管しておくことも重要です。これにより、将来の監査や税務対策に備えられます。

オフィス移転時

オフィスの移転に伴って行われる内装工事は資産として計上され、その価値が減じる期間にわたって償却されることになります。内装工事の減価償却においては、内装の種類に基づいて耐用年数を判断するのが一般的です。

内装の種類にはさまざまなものがあり、例えば壁や床の素材、設備の種類などが含まれます。それぞれの内装の種類に対して、会計基準や税法上で定められた耐用年数が存在するのです。

賃貸物件の場合、賃貸契約の条件によって減価償却の取り扱いが異なることがあります。一般的に、賃貸物件では賃借期間が定められており、更新ができない場合や有益費の請求や買取請求ができない場合には、賃貸期間を耐用年数として計上することが可能です。ただし、具体的な契約内容や法的な規定に従って正確な計算と処理を行う必要があります。

内装工事の耐用年数の会計処理における注意点

最後に、内装工事の耐用年数の会計処理における注意点について詳しく解説します。適切な会計処理を行うことで、正確な財務状況の把握と適切な税務処理が可能となります。

取得価格を正確に把握する

取得価格とは、内装工事に要した費用のことで、この金額を元に減価償却額が計算されます。取得価格は工事の主たる費用である建設費用だけでなく、設計費、監理費、確認検査費、その他の関連費用等を含みます。

なお、工事の規模によっては、固定資産税の納税義務が発生する可能性もあるので、取得価格の正確な把握は税務処理にも重要です。

また、内装工事の取得価格は一部を経費として計上し、残りを固定資産として計上することもあるでしょう。例えば、一度の工事でオフィス全体を改装した場合、オフィス内部の一部を改装するための費用は経費としてすぐに計上し、大規模な改修や機器の取り替えなど、将来にわたって使用するための出費は固定資産として計上することがあります

こうした精緻な取り扱いを可能とするためにも、取得価格の正確な把握は不可欠です。内装工事に関わる全ての費用項目を確認し、適切な会計処理を行うことが求められます。

費用の償却開始時期を決める

内装工事の耐用年数の会計処理においては、費用の償却開始時期を正確に決定することが重要です。償却開始時期の適切な決定は、内装工事に関連する費用を適切に償却するために欠かせません

まず、償却開始時期は内装工事の完成時期や取得時期によって異なることがあります。一般的には、内装工事が完了して使用可能な状態になった時点で償却を開始するのが一般的です。

しかし、内装工事の完成後に設備の取り付けやメンテナンスなどの作業が行われる場合は、償却開始時期を後ろにずらす場合があります。その理由としては、設備の取り付けやメンテナンスが完了するまで内装工事の機能を十分に発揮できないため、その期間中はまだ償却を開始しないという判断が行われることがあるのです。

ただし、この場合でも、具体的な契約条件や会計基準に従って、償却開始時期を正確に決定する必要があります。

建物付属設備についても確認する

内装工事には、オフィスのデザインや機能性を向上させるために、新たな装置や設備を設置する場合があります。こうした建物付属設備についても、減価償却の対象となりますので、適切に確認することが大切です。

建物付属設備とは、建物に固定的に取り付けられ、建物と一体となってその機能を発揮する設備を指します。具体的には、電気設備、ガス設備、エレベーターなどの設備などです。

これらの設備は、内装工事の一部として取り付けられる場合が多いですが、その取得価格と耐用年数は内装工事そのものとは異なる可能性があります。つまり、これらの設備の取得価格や耐用年数を正確に把握し、それに基づいて減価償却を行う必要があるのです。

具体的には、各設備の取得価格と耐用年数を把握し、それぞれ別々に減価償却を計算します。それぞれの設備の耐用年数は、税法上の規定や製造元の保証期間などを参考にしましょう。

このように、建物付属設備の減価償却を適切に行うことで、資産の価値を正確に評価し、会計上の誤りを防ぐことが可能となります。

まとめ

内装工事の耐用年数は、その経済的な効果を長期にわたって正確に評価するための重要な概念です。耐用年数と減価償却の関係性を理解し、内装工事や電気機器、内部造作物など、種々の資産の耐用年数を把握することで、正確な会計処理が可能となります。

内装工事を検討している方は、ぜひ山吉吉田へご相談ください。さまざまなニーズに応じた内装工事の施工実績があり、ご提案から施工まで責任を持ってお任せいただけます。お問い合わせは、お問い合わせフォームから受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

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