老人ホームは内装の良し悪しによって印象が大きく変わるため、魅力的な内装作りが欠かせません。必要なポイントを理解していないまま内装を作ってしまうと、利用者にとっても従業員にとっても過ごしにくい内装になってしまうかもしれないのです。
そこでこの記事では、老人ホームの内装に悩んでいる、老人ホームの内装のポイントについて詳しく知りたいという方のために、老人ホームにおける内装の重要性を解説していきます。利用者が入居を決める内装のポイント、内装を設計する上での注意点についても紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
老人ホームにおける内装の重要性
内装作りは、老人ホームの経営に大きな影響を与える重要なポイントになります。なぜなら、良い内装は老人ホームに出入りする全ての人々にとって必要だからです。ここでは、老人ホームにおける内装の重要性を詳しく解説していきます。
- 利用者の生活の質が上がる
- 利用者の満足度が向上する
- 従業員が働きやすくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
利用者の生活の質が上がる
内装を充実させると、入居者は生活をしやすくなるでしょう。例えば、階段に手すりを取り付ければ、体を支えやすくなり移動が楽になります。さらに、ナースコールを取り付ければ、何か異常があったときに老人ホームの従業員がすぐに対応できて、入居者は安心して生活できるはずです。
天井や壁紙のデザイン、照明による光の取り入れ方などを工夫すれば、過ごしやすい空間や雰囲気を演出できて、入居者の心の健康維持に大きく貢献できます。内装にこだわることで、肉体的にも精神的にも入居者の生活の質を上げられるでしょう。
利用者の満足度が向上する
内装の充実度によって利用者の生活の質が向上すれば、当然老人ホームへの満足度も高まります。満足度が高まって入居者にずっと老人ホームで暮らしたいと思ってもらえたら、退去のリスクを減らすことが可能です。
さらに、入居者が老人ホームに良い印象を持っていれば、友人や知り合いにホームの良さを伝えてくれて、利用者が増加する可能性もあります。実際にホームで暮らしている方の口コミは信頼度が高いと判断されるので、大きな宣伝効果をもたらしてくれるでしょう。
内装を工夫して利用者の満足度を高めるのは、老人ホームを経営する上での要といっても過言ではありません。
従業員が働きやすくなる
内装の良し悪しは、従業員の作業の質にも影響します。例えば、入居者に手厚い介護が必要な場合、手袋や消毒液などの備品や洗面台を頻繁に使うことになるでしょう。そういった備品や設備が使いやすい場所に、適切な配置で備えられている内装デザインが採用されていると、それだけで作業効率が増して業務のスピードアップが期待できるのです。従業員が働いていく上で感じるイライラやストレスも抑えられます。
また、良い内装デザインは、更衣室や休憩室など従業員が利用する空間を快適に保つ上でも役立ちます。
従業員が働きにくい環境だと離職率が高くなる可能性がありますし、従業員が不満を抱えたままでは入居者の満足度を落とす結果にもなりかねません。従業員に配慮した内装を整えることは、老人ホームの経営を行う上で必要な措置といえます。
利用者が入居を決める内装のポイント
ここまで、老人ホームにおける内装の重要性について解説しましたが、実際に利用者はどんなところに注目して入居を決めているのでしょうか。利用者に入居を決めてもらうには、見学の際にできるだけ良い印象を与えておく必要があります。
内装次第で老人ホームの印象は全く違ったものになるので、利用者が入居を検討する際に特に着目するポイントを知れば、好印象を与えられる可能性が高くなるはずです。ここからは、より多くの入居者を獲得するために押さえておきたい内装作りの要点を解説していきます。
- 設備の充実度
- 安全性の高さ
- 過ごしやすさ
順番に見ていきましょう。
設備の充実度
設備の充実度は、利用者が入居を決める大きなポイントです。バス、キッチン、トイレ、介護用ベッドなどの生活に欠かせない設備はもちろんのこと、近年ではカラオケやシアタールーム、プール、温泉といったような生活を豊かにするための設備を備えている老人ホームも増えています。
他にも、開放感を味わえる広いロビーや趣味の家庭菜園ができるスペース、家族との時間を大切にできるゲストルームなど、利用者が人生を楽しむための設備が充実していると、入居してからの夢が広がり、「このホームに住みたい」と感じてもらえるでしょう。
ホームの設備は利用者にとって使いやすくて不自由を感じさせないものであるのは当然ですが、「残りの人生を楽しみたい」というニーズに応えるのも重要です。
安全性の高さ
安全性の高さは、利用者が入居を決める際の最重要事項といっても過言ではないでしょう。高齢の入居者が転ばないような段差の少ない部屋作り、体を支えるための手すりの設置、ヒートショックを起こさないための浴室暖房など、安全性を高めるための施策を妥協せずに行うことが、利用者や利用者の家族の安心につながります。
また、高級な老人ホームでは、クリニックを内部に併設して医師や看護師、介護福祉士を配備し、24時間体制で医療を提供しているところもあります。病気やケガのリスクが高い高齢者を迎え入れるからこそ、「ここなら安心して入居できる」と思ってもらえるような、内装作りをすることが必要です。
過ごしやすさ
過ごしやすさは、入居者の精神の健康に直結する大切な要素です。高齢になるとどうしても足腰が弱ってしまい、活発に活動することが難しく、外出の頻度が減るケースも珍しくありません。老人ホームの中で過ごす時間が多くなりがちな入居者のために、老人ホームの中でも満足できるような内装にすることが大切です。
壁紙や光の取り入れ方を工夫して明るい雰囲気を作ったり、レクリエーションルームを導入したりするなど、楽しめる工夫をしている老人ホームもあります。
老人ホームの中が過ごしやすい空間であることは、入居者の心の健康を保つ上では欠かせない要素です。利用者の満足度を高めるためにも、過ごしやすさを意識した内装を検討しましょう。
老人ホームの内装にかかる費用相場
内装工事にかかる費用の相場は、スケルトン物件で坪単価15万から20万円程度です。スケルトン物件とは、柱や壁、天井といった建物を支える構造物だけでできている物件を指します。内装がなく、コンクリートや配管がむき出しの状態になっている状態からの内装工事にかかる費用と考えると良いです。
ただし、老人ホームのタイプや規模、取り付ける設備、内装材の種類などによって、実際にかかる工事費用は大きく変化します。内装工事を依頼したい老人ホームでかかる正確な費用を知りたい場合は、業者に見積もりを依頼してみましょう。
内装工事費用の内訳
内装工事費用には基本的に以下のような内容が含まれます。
- 施工費
- デザイン費
- 間仕切り
- 建具
- 床、壁、天井の装飾
- キッチン
- 洗面、トイレ、浴室などの水回り
- 造作家具
老人ホームのタイプによって必要な設備が異なることから、上記以外にも金額が発生する場合があります。
老人ホームの内装工事費用を抑えるコツ
内装工事の費用を抑える方法は、主に以下の2つです。
- 居抜き物件を利用する
居抜き物件とは、以前の建物所有者が使用していた内装や設備、家具、什器などがそのまま残っている物件のことです。住居として必要なものがすでにそろっている状態なので、新しく作り直さなければ、工事費を抑えられます。
- 補助金や助成金を活用する
老人ホームの種類によっては、国や自治体から補助金や助成金が出ます。補助金・助成金の種類は多様で、それぞれの地方自治体で適応の対象や条件、受取金額が異なっています。そのため、補助金・助成金の利用を検討する際は十分に調査するようにしてください。
老人ホームの内装を考える際の注意点
老人ホームの内装を作る際には、気を付けなければならない点がいくつか存在します。ここでは、主な注意点を5つ解説していくので、参考にしてみてください。
- 病院のような雰囲気にならないようにする
- 利用者を見守りやすい構造にする
- 利用者に合わせた内装にする
- ユニバーサルデザインを取り入れる
- 設備基準に遵守したデザインにする
それぞれ詳しく解説していきます。
病院のような雰囲気にならないようにする
老人ホームは、入居者にとってこれから自分の生活の一部となる場所です。病院のような雰囲気にしてしまうと、入居者がゆったりとした落ち着いて過ごすのは難しいでしょう。そのため、利用者が求めている空間とかけ離れたものになってしまいます。
心と体を健やかに保ちながら、人生を楽しめる老人ホームを望んでいる人は多いので、老人ホームの雰囲気を意識するようにしてください。病院のように無機質な印象を与えるのではなく、生活に彩りを与えてくれる内装にすることが大切です。
利用者を見守りやすい構造にする
病気やケガなどの不測の事態が起きたときに迅速な対応をするためには、見守りやすい環境にすることが大切です。入居者の安全を考える上では、入居者の行動や健康状態を把握しやすい作りにしておくことが求められます。
また、見守りやすい環境作りをしていれば、従業員によるサービスの質の向上が見込めます。入居者の状態が把握できていれば、必要になるサポートが予測しやすく、従業員が動きやすいためです。
ただし、監視されているような印象を与えてしまうと、入居者にストレスを感じさせてしまう可能性があります。プライベートに十分配慮することを念頭に置きながら、見守りやすい構造作りを実現していきましょう。
利用者に合わせた内装にする
高齢者は一人一人、必要な介護の度合いが異なるので、受け入れる利用者の介護レベルに合わせた最適な内装にする必要があります。介護をあまり必要としない利用者が多い場合と介護の必要性が高い利用者が多い場合の2つのパターンで見ていきましょう。
介護をあまり必要としない利用者が多い場合
介護をあまり必要としない利用者が入居の対象であれば、基本的に自立した生活を送れることが想定できます。そのため、居室はトイレや浴室、キッチンのついたワンルームのような間取りと内装になります。
また、共用設備は、プールやトレーニングジム、リハビリルームなど体を動かすことのできるものが用意できれば、肉体的な健康を維持するのに役立ててもらえるはずです。
また、介護設備にかかる費用が少なくなるため、オシャレな内装や娯楽設備に力を入れられます。レクリエーションルームを設け、ヨガや陶芸など専門の講師を招いたカルチャースクールのような催し物を行う老人ホームも少なくありません。
介護の必要性が高い利用者が多い場合
介護の必要性が高い利用者を受け入れる場合は、介護用ベッドの導入が必要になります。入居者が介護用ベッドのリクライニング機能を使った際に、窓の外やテレビが見えるよう内装を工夫すると良いでしょう。自力で立ち上がるのが困難な入居者には、つかまり立ちができるように、ベッドの脇にサイドバーや柵を設置すると良いです。
また、居室には介護者がスムーズに作業できる十分なスペースが必要なので、部屋の広さにも配慮してください。車いすを利用している入居者の場合は、さらに広めの空間が必要になります。
しかし、広すぎるとトイレへの移動などが大変になってしまうので、適切な動線を設計し、利用者と介護者にとって過不足のない部屋の広さを考えなければいけません。
ユニバーサルデザインを取り入れる
ユニバーサルデザインとは、全ての人が使いやすいデザインのことです。老人ホームでは、身体的にハンデのある方でも不自由なく利用できるデザインが求められます。例えば、車いすの利用者が一人で上り下りできるようにエレベーターを設置したり、浴室での転倒を防ぐための手すりを付けたりといった対策が、あらゆる場面で必要です。
高齢になると、どうしても若いころのように体を動かせなくなります。そして一人一人抱える問題が違うため、どんな特徴を持った人でも平等に使えるデザインを取り入れることが大切です。
設備基準に遵守したデザインにする
老人ホームの内装には、高齢者が安全で快適な生活を送れるよう、あらかじめ定められた設備基準が存在します。
例えば、養護老人ホームの場合、居室を地下に設けてはいけません。さらに、入居者一人当たりの床面積は十・六五平方メートル以上必要で、静養室や集会室、医務室や食堂などの設備を整えるようにするなど、施設を作るにあたって守らなければならない内容が細かく指示されています。
この設備基準は老人ホームの種類によって異なるため、内装を設計する際は、法令をよく確かめた上で、違反しないよう気を付けてください。
近年増えている老人ホームの内装
近年、老人ホームの内装は、以前のものに比べてより快適で魅力的なものが増えています。以下はその一例です。
- 開放的なリビングとキッチン
- 洗練されたシックな内装のデザイン
- 監視カメラやセンサー、警報などのセキュリティーシステム
- インターネットに接続された最新のテクノロジー
一時的な滞在先ではなく、「終の棲家」として老人ホームを捉える方が増えています。そんな方にとっては、老人ホームはとても長い時間を過ごすことになる大切な場所です。快適で生き生きした日常を送るのにふさわしい内装を整えて、利用者の人生を豊かなものにするお手伝いをしていきましょう。
まとめ
老人ホームの内装にこだわれば、入居者の生活の質を高め、老人ホームに対する満足度を向上させる結果につながるでしょう。さらに、従業員の働きやすい環境作りにも注視すれば、業務の質の向上も期待できます。
老人ホームを検討している人は、内装の充実度や安全性の高さ、過ごしやすさなどを判断基準に置きながら選んでいるため、そういった点を意識して内装のデザインを考えれば、より利用してもらいやすくなるはずです。
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