病院の改修工事のポイントを解説|注意点や費用を抑えるコツとは
2023/03/20
コラム

病院は、患者に安全で快適な医療環境を提供するのはもちろんのこと、地域における役割においても重要な建物です。時代が変化していく中で、病院の改修工事は安全や医療体制を保つために必要な選択といえるでしょう。

この記事では、病院の改修工事の必要性や改修工事を行う際のポイントを解説していきます。注意点や補助金制度なども合わせて紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。

病院の改修工事はなぜ必要?

まずは、病院の改修工事の必要性について紹介していきます。改修工事が必要とされる主な理由は、下記の3つです。

  • 建物の強度を改善して安全性を確保する
  • 医療スタッフが働きやすい環境になる
  • 患者が過ごしやすい快適な空間になる

詳しく見てみましょう。

建物の強度を改善して安全性を確保する

現在の病院の建物が1981年以前に建設された建物である場合、新耐震基準に対応した構造になっていない可能性が高いです。

つまり、近年発生する可能性が高いといわれる震度6〜7の地震に建物が耐えられない心配があります。新耐震基準に準じた耐震改修が必要になるので、改修工事を検討してみてください。

耐震診断が義務付けられている建物もありますが、該当していなくても耐震診断を受け、改修しておきましょう。

特に、病院は患者と医療スタッフの安全を確保するのはもちろん、災害時に拠点となる建物でもあります。地域の役割という面でも、もっとも耐震改修を優先しなければいけない建物です。

医療スタッフが働きやすい環境になる

病院の設備の改修工事を行うことによって、医療スタッフの労働環境の改善が期待できます。建て替え工事までしなくても、浴室やトイレ、廊下の幅、エレベーターの広さなど、患者へのケアに関わる場所を新しくするのは、働くスタッフにとって大きなメリットです。

古い設備のままでは、現在の医療機器が扱いにくかったり、日頃業務を行う上での不便が生じる場合もあります。改修によってそのような問題が解消されれば、作業効率の向上も期待できるでしょう。

また、改修と同時に最新の医療機器を導入すれば、治療の幅も広がり患者へより良い医療を提供できます。患者へ質の良い医療が提供できる環境は、スタッフもやりがいを感じられて、モチベーションも上がります。

 

患者が過ごしやすい快適な空間になる

古い設備の病院では、ユニバーサルデザインにある程度配慮されていたとしても、現代のニーズには不十分な点も多くあります。特に、高齢化が進む現代では、よりバリアフリーに配慮した構造が求められているのです。設備を新しくすれば、患者が無理なく受診できて、入院生活でも快適に過ごせる環境を整えられます。

さらに、病院内の設備が不十分な状態だと、生命に直結するようなトラブルが起こるリスクも考えられるでしょう。

例えば、院内で患者が転倒してしまったり、患者間の間接的な接触によって免疫が低下した状態の患者に感染が引き起こされたりなどが挙げられます。患者にとって快適な環境を保つことは、命を守ることにもつながるのです。

病院の改修工事を行う際のポイント

せっかく改修工事を行うなら、やはり患者も医療スタッフも気持ちよく快適に過ごせる環境にしたいですよね。では、病院の改修工事を行う際には、どのようなポイントを意識すべきなのでしょうか。ここでは、病院の改修工事で考慮したいポイントを2つ解説していきます。

  • 清潔感のある落ち着くデザインに
  • 患者もスタッフもスムーズな動線に

それぞれ詳しく紹介します。

清潔感のある落ち着くデザインに

病院では清潔感が求められるので、清潔感がありつつも患者が落ち着けるような内装にすることが大切です。いくら最新の医療設備が導入されていても、清潔感がなければ印象は良くありません。

病院の内装では、明るく柔らかい色で安心感のあるデザインが好まれます。内装デザインを考える際には、清潔感や安心感など、患者に与える印象を意識するようにしてください。

また、清潔に保てるよう、内装に使用する材質に気を使ったり掃除がしやすいものを選んだりすると、より良くなるでしょう。

患者もスタッフもスムーズな動線に

2つ目のポイントは、患者とスタッフの双方にとってメリットのある動線作りです。外来であれば、診療から検査、会計までの動線をスムーズに確保することで、患者は必要以上の移動をせずに済みます。

患者にとってのスムーズな動線は、案内や付き添いをするスタッフにとっても、効率良く作業ができるというメリットがあるのです。スムーズで分かりやすい動線の確保は、患者とともに移動するカルテなどの情報を取り違える可能性も低くなり、医療事故やインシデントの発生も防ぐことができます。

また、病棟など入院生活の場でも、病室とナースステーションなどの配置や患者が使用する浴室やトイレなどの動線を効率良く確保し、安全で快適な環境作りをするのが重要です。

病院の改修工事で注意すべき点

次に、病院を改修する際に注意しなければならない点を紹介します。病院は患者に最適な医療を提供し続ける必要があるのはもちろんですが、経営の側面からも改修工事期間中の配慮は必要です。

  • 工事中も収益を落とさない
  • 工事中の騒音や振動に注意する

それぞれの注意点を見ていきましょう。

工事中も収益を落とさない

改修工事を行う際は、工事の期間中に病院の収益を落とさないように考慮しておきましょう。

改修期間中に外来などの診療を制限、一時中止すると、病院経営に大きく影響を及ぼします。かかりつけとしてフォローしている患者は別の医療機関の受診を余儀なくされ、改修工事完了後に、またかかりつけ医として選んでもらえるとは限りません。

収益を落とさずに改修工事を行うには、必要な機能を維持できる状態を確保しながら少しずつ工事を進めていく、大規模な工事になる場合は一時的に別の賃貸物件を借りて診療を継続するなどの対応が必要です。

工事中の騒音や振動に注意する

工事期間中は、工事の騒音や振動に対する配慮も必要です。外来診療はもちろんですが、特に入院施設のある病院の場合には、患者の療養生活に大きく影響します。工事期間前に、事前に日程などを掲示して理解を得ることが重要です。

入院している患者は、状態や必要性を考慮した上で、騒音や振動が少しでも緩和される場所や部屋の移動も検討した方が良い場合もあります。

また、検査機器に影響がある場所の改修工事については、患者への精神的負担を軽減するのはもちろんのこと、検査自体が正確に実行できないという事態も避けなければいけません。できる限り工事の影響が少ない休診日や、土日祝日などの検査が少ない日に工事日程を組むなど、スケジュールの調整も必要です。

病院の改修工事では補助金も利用可能

改修工事と簡単にいっても、実行するとなると費用面での問題は避けられませんよね。特に医療機関では、設備や環境整備のために膨大な改修費用が必要です。病院の改修工事では国や地方自治体の補助金制度を利用できるので、改修工事を行う際には補助金をうまく活用しながら行っていきましょう。

ここからは、厚生労働省が実施する「医療施設等施設整備費補助金」が利用できる工事について解説します。

へき地診療所施設整備

へき地診療所施設とは、原則として近隣に医療機関がない地域における診療所施設です。厚生労働省が定める定義に該当する施設を指し、へき地にある診療所全てではありません。へき地診療所施設に該当する場合、改修や増築に補助金制度が利用できます。

 

対象の工事 診療所:診察室、処置室、薬剤室、X線室、暗室、待合室、玄関、廊下等

医師住宅

看護師住宅

ヘリポート

補助率 2分の1

過疎地域等特定診療所施設整備

過疎地域等特定診療所は、眼科、耳鼻咽喉科、歯科の機能をもつ医療機関がない市町村において、地域住民の医療の確保を目的として設置された診療所です。過疎地域等特定診療所として必要な設備の新築、増改築に要する工事費を国から補助金を受けられます。

 

対象の工事 診療所:診察室、処置室、薬剤室、X線室、暗室、待合室、玄関、廊下等

医師または歯科医住宅 

看護師住宅

※ただし、既存の過疎地域等特定診療所の改修は対象外

補助率 2分の1

へき地保健指導所施設整備

へき地保健指導所は、保健医療の機会に恵まれない住民に対する保健指導を実施することを目的として設置され、保健師が業務にあたります。へき地保健指導所に必要な施設の新築に関わる工事費について、国から補助を受けることが可能です。

 

対象の工事 指導部門:問診室、診察室、事務室、面談指導室、図書室、計測室、検査室、集団指導室、待合室

保健師住宅

補助率 3分の1

※ただし、沖縄県にある場合は2分の1

研修医のための研修施設整備

研修医のための研修施設は、臨床研修医が研修を行うのに必要な講義室、討議室、図書館や夜間の自主研修や救急外来患者に対応するための仮眠室などを備えた施設です。研修棟として必要な部門の新築または増改築にかかる工事費について、補助金制度が利用できます。

 

対象の工事 研修棟:講義室、討議室、図書・視聴覚室、図書閲覧室、仮眠室

管理部門:管理室、更衣室、廊下など

補助率 2分の1

臨床研修病院施設整備

臨床研修病院施設とは、厚生労働省が定める病床数や診療科目数などを満たし、臨床研修に必要な施設を有し、研修研究活動が活発に行われている病院のことを指します。臨床研修医に対する環境整備のための外来診療棟の新築、増改築にかかる工事費について補助を受けられます。ただし、臨床研修を実施している診療部門及び診療科が補助対象です。

 

対象の工事 外来診療部:各診療科の診察室

救急診療部門:診察室、処置室

総合診療部門:総合外来診察室

在宅医療部門:在宅医療指導管理室

病歴管理室等

補助率 2分の1

へき地医療拠点病院施設整備

へき地医療拠点病院施設は、都道府県知事が指定した病院で、医療体制が乏しい地域での巡回診療や診療所への医師の派遣、遠隔診療の支援などを行い、へき地からの入院患者を受け入れる病院です。

へき地医療拠点病院として必要な部門や病棟、検査科などの新築、増改築にかかる工事費用についての補助を受けることができます。

 

対象の工事 検査、放射線、手術部門:検査室、照射室、操作室、手術室、準備室、回復室、廊下等

病棟:病室、診察室、処置室、記録室、患者食堂、暖冷房、その他付属設備等

医師住宅

補助率 2分の1

医師臨床研修病院研修医環境整備

医師臨床研修病院研修医環境整備とは、厚生労働省の事業で進められる、臨床研修医の生活環境の拡充を目的とした施設を指します。臨床研修医の研修環境や生活環境の充実を図るための宿舎などの新築、増改築にかかる工事費について補助を受けることが可能です。

 

対象の工事 宿舎:宿舎内のバルコニーや廊下、階段等の共用部分を含む
補助率 3分の1

離島等患者宿泊施設施設整備

離島等患者宿泊施設は、気象条件によって交通手段が寸断されたり、必要な医療を受けるためにへき地医療拠点病院等へ向かう際、相当な時間を要する場合に患者とその家族が利用できる宿泊施設です。

離島等患者宿泊施設として必要な新築、増改築にかかる工事費について補助を受けることができます。

 

対象の工事 宿泊施設内の必要な箇所の新築、増築、改修箇所

※ただし、上限8室で改修の場合は厚生労働大臣が必要と認めた額の補助

補助率 3分の1

産科医療機関施設整備

産科医療機関施設は、分娩を扱う機関です。産科医療機関として必要な分娩室や病棟などの新築、増改築及び改修に関する工事費について、補助を受けられます。

 

対象の工事 診療部門:分娩室、病室等

宿泊施設 ただし2室を限度とする

補助率 3分の1

死亡時画像診断システム施設整備

死亡時画像診断システム施設とは、死亡時の画像診断や解剖の実施が必要な場合に使用される施設・設備を指します。必要な施設の新築、増改築及び改修にかかる費用について補助を受けることが可能です。

 

対象の工事 実施に必要な施設の新築、増改築、改修
補助率 2分の1

まとめ

この記事では、病院の改修工事について解説いたしました。改修工事が必要な理由としては、建物の強度を改善して安全性を確保できる、医療スタッフが働きやすい環境になる、患者が過ごしやすい快適な空間になるなどが挙げられます。

病院の改修工事を行う際には、清潔感のある落ち着くデザインで、患者もスタッフもスムーズに移動できる動線の確保を意識しましょう。

医療機関の改修工事にお悩みの方は、ぜひ山吉吉田にご相談ください。山吉吉田では、内装工事や工場・病院などの大きな施設の塗装工事だけでなく、病院の改修工事の実績もございます。ご相談はお問い合わせフォームから受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

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