近年、一見するとカフェや美容院のようなオシャレな外観の歯医者が増えています。しかし、患者に良い印象を抱いてもらうためには、外観だけでなく居心地の良い内装も重要です。歯科医院の内装は集客率やリピート率にも大きく影響するので、しっかりと検討しなければいけません。
この記事では、歯医者が内装にこだわるべき理由や内装工事のポイント、費用相場、費用を抑える方法などを詳しく解説していきます。大きい出費になる内装工事で失敗しないために、ぜひチェックしてみてください。
歯医者が内装にこだわるべき理由
歯医者の数は、ここ数十年増加傾向にあります。厚生労働省が発表している「厚生労働白書」によると、2018年以降歯科医師数は10万人を超えています。そのうちの半数近くが「診療所の開設者又は法人の代表者」で、新規開院する歯科は年間2,000件ともされているのです。
どんどん歯科医院が増えている現在、集客のためには差別化が重要になるでしょう。差別化戦略には、診療内容・スタッフの患者への接し方といった内面的な要素、Webサイト・ロゴマークのような外面的要素が考えられます。そして、内装デザインもまた、患者にとっては居心地の良さ、安心感・信頼感を左右する大切な要素です。内装デザインにもこだわって、他院との差別化を図りましょう。
歯医者の内装工事のポイント
内装デザインは、患者にとっての歯医者のイメージにつながる要素と解説しました。殺風景で居心地の悪い歯科医院には患者も通いたくないでしょう。では、内装デザインを考えて工事をする際には、どのようなポイントに気を付ければ良いのでしょうか。ここでは、歯医者の内装工事のポイントを3つ解説します。
- コンセプトをしっかりと決める
- 患者の年齢層に合わせる
- スタッフの働きやすさを意識する
どれも、患者の安心感・信頼感に関わってくるので、しっかり押さえておきたいポイントです。
コンセプトをしっかりと決める
他の歯医者との差別化や集客のためには、自院のブランドコンセプトを内装デザインに反映させましょう。内装工事に取りかかる前に、自院のコンセプトを整理して業者に伝えられるようにしてください。
歯医者では、信頼感、清潔感は最低限必要な要素です。その上で、審美を目的にした歯科ではエステのようにリラックスできる雰囲気にする、小児歯科では子どもに安心感を与える要素を取り入れるなど、歯医者としての方向性によって、適切な内装は異なります。
例えば壁紙などは、清潔感を求めて白一色で統一すると、殺風景な印象を与えてしまいます。待合室などの一部にリラックスしやすいベージュ系や、優しい印象のパステルカラーを取り入れるのも1つの方法です。
患者の年齢層に合わせる
患者の年齢層によって喜ばれる内装デザインは異なります。自院のターゲットとする患者層に合わせた内装デザインにするのも重要なポイントです。
例えば、小児層の集客を考えているのであれば、待合室には黄色やオレンジの暖色系またはパステルカラーを取り入れて、子どもの不安感をなくす工夫をしてみてください。
一方、中高年層がターゲットの場合は、落ち着いた雰囲気でリラックスしてもらうために、ブラウン系やナチュラルなベージュ系を取り入れると喜ばれやすいでしょう。壁紙以外にも、絵を飾ったり花を飾ったりといった演出も、ターゲット層に合わせて工夫できます。
このように、集客したい年齢層の患者が「居心地が良い」と感じられる内装デザインを重視しましょう。
スタッフの動きやすさを意識する
デザイン性だけを意識して、使い勝手が悪くなってしまうと仕事の効率が悪くなります。診察室と受付の間は往来しやすいか、作業スペースに十分な広さがあるか、掃除はしやすいかなどの動線や機能性も意識しましょう。
特に歯科医院では、準備のための作業台、機械の部品を洗うための流しも必要です。この作業台+流しのある作業場を、作業効率重視で患者から見える位置に設置するか、患者への配慮を重視して隔離した場所に設置するかは、前述したブランドコンセプトによるでしょう。
いずれにしても、患者だけを意識するのではなく、スタッフの動きやすさも意識して考えると、スタッフも効率的に働けるようになります。
近年増えている歯医者の内装デザイン
近年の歯医者には、カフェや美容院のような外観が増えていると解説しましたが、それと同時に、内装のデザインにも変化が生まれていています。近年では、下記のような内装の歯医者が増えてきているのです。
- 診療スペースを個室にする
- 自然素材を利用する
- バリアフリー化する
順番に見ていきましょう。
診療スペースを個室にする
歯科医院の利用者は近隣住民が多いため、待合室で友人・知人に偶然会ってしまうこともあります。しかし 治療時のプライベートな会話や様子を友人・知人に知られたくないものです。そういったプライバシーを守るために、パーティションを設置したり、診療ブースを初めから個室化する医院が増えています。
また、歯科医院ならではのドリル音に恐怖を感じる人も多いと思います。他の患者の治療の音を遮断してリラックスしてもらうという点でも、個室化は有効です。
コロナウイルスへの感染対策という面でも、診療スペースが個室になっていれば患者に安心感を与えられるでしょう。
自然素材を利用する
近年では、従来の歯科医院に多く見られた白や淡いカラーの内装から、自然素材を生かした内装を取り入れる歯科医院が増えてきています。木材や石材など自然素材を内装に取り入れることで、安心してくつろげる空間を演出できます。予算が限られる場合は、木目風や石材風の柄の壁紙などを検討しても良いでしょう。
古いタイプのいかにも診療所というイメージの内装デザインでは、過去の経験から治療や痛みに対する不安を呼び起こし、過度に緊張してしまう患者もいます。このことも、患者の不安を和らげて、リラックスしてもらえるようなデザインに人気が集まっている理由です。
バリアフリー化する
2006年に「高齢者、障がい者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)」が施行されました。そのため、高齢患者や小児患者に優しいバリアフリー化が、歯科医院にも求められています。
バリアフリー化の一環としては、ベビーカーや車椅子に対応できるスライド式ドア、低い受付カウンターの設置、段差の排除、解除可能な個室診療室、2タイプの診療台などの設置が考えられます。
また、入口の段差をなくし、スリッパに履き替えることなく土足で上がれる医院も増加している傾向です。その場合は雑菌が持ち込まれることになるので、清掃や消毒がしやすいかどうかも同時に考えておく必要があるでしょう。
歯医者の内装工事にかかる費用の相場
歯医者の内装工事にかかる費用の相場は、医院の規模や地域、依頼する業者などによって異なりますが、坪単価30万〜100万円が目安です。歯科医院の内装には、電気設備や水道設備などの基本的な設備だけでなく、受付や診察に必要な設備として、PC、ユニット、医療機器用のスペースや回路なども求められます。
過度にこだわった内装にしなくても、これらの最低限の設備を揃えるだけである程度の費用が必要になると想定しておきましょう。自院の内装工事にかかる正確な費用が知りたいという方は、業者に見積もりを依頼してみてください。
内装工事の費用を抑える方法は?
内装工事には多額の費用が必要になるため、少しでも金額を抑えたいと思う人は多いでしょう。ここでは、内装工事の費用を抑える方法について解説していきます。
- 資材のグレードを下げる
- 家具は自分で調達する
- 複数の業者に見積もりを依頼する
歯科治療のための診察設備の質を下げるのは、安心感を損なうことになるため、絶対にしてはいけません。それ以外の方法で、患者へのイメージダウンをすることなく費用を抑えるにはどうすれば良いのか、詳しく見ていきましょう。
資材のグレードを下げる
歯科医院の天井・床・壁などの目に見える内装仕上げに使われる材料は、天井は岩綿吸音板、床はビニールタイル、壁はビニールクロスを使用することが多いです。それぞれの材料にグレードがあり、当然のことながらグレードが高いほど機能性とデザイン性に優れたものになります。費用とのバランスを考えながら、グレードを選択すると良いです。
また、特殊なものを使用する場合は施工費が高くなります。天然の木材や石材を取り入れたい場合は、アクセントとなる一部に留めておきましょう。エントランスや受付スペース、待合室など患者の目に触れる場所は少し良いものを選び、それ以外の場所でグレードを下げるなど、工夫をしながら費用を削減してみてください。
家具は自分で調達する
歯科機器以外で必要になる家具は、待合室・カウンセリングルームなどのソファやテーブル、チャイルドルームがある場合はその家具、他に棚やロッカーなどがあります。ソファやテーブルなどの家具は、中古品を利用したり自宅から調達したりしても良いでしょう。
自分で作品を作るのが好きな方は、DIYや手作りの家具を取り入れて、アットホームな雰囲気にするのもおすすめです。
棚やロッカーなどの収納は、既製品を使わず全て造り付けにすると洗練されたイメージになりますが、費用が一気に跳ね上がります。内装工事費を抑えるためには、業者任せにせずに自分で家具を調達することも検討してみてください。
複数の業者に見積もりを依頼する
1社のみに依頼をしてそのまま工事をしてもらうとなると、費用が相場よりも高くなっていたとしても気がつくことができません。まずは複数の業者に見積もりを依頼して、自院の内装工事にかかる相場はどのくらいなのかを把握するのがおすすめです。
費用を下げられる項目の目安なども分かってくるので、節約できるポイントを自分で判断しやすくなるでしょう。見積もりをしっかりと見比べながら費用項目などをチェックして、金額を抑えられるポイントを検討してみてください。
歯医者の内装業者を選ぶコツ
数多くの内装業者の中から、どこに依頼すべきか迷ってしまう方も多いでしょう。内装業者を選ぶ際には、どのような点を見れば良いのか、2つ紹介していきます。
- 歯科医院の内装実績がある
- 要望に合わせて対応してくれる
内装業者選びの参考にしてみてください。
歯科医院の内装実績がある
歯科医院の内装工事の設計には、歯科医院特有の専門的な部分も多くあります。歯科医院を手掛けた経験があまりない業者では、そういった専門的な知識が少なく、満足のいく内装にならないかもしれません。
歯科医院の設計・施工実績が豊富な業者であれば、歯科医院ならではの設備・水道・電気、患者の利便性・安心感などをふまえた提案を行ってもらえるでしょう。
デザインコンセプトなどは、口頭説明だけではイメージがうまく伝わらない場合もあります。実績のある業者に相談すれば、今までの施工事例画像などを提示してもらった上で、近しいデザインがあるかどうかなどの話もしやすいです。
歯科医院の内装実績が少ない業者でも、創業年数が長い会社で医療機関の実績があれば選択肢の1つに上げても良いでしょう。
要望に合わせて対応してくれる
内装業者を選ぶときに、「要望に合わせて対応してくれるか」も重視したいポイントです。設計・施工までがある程度パッケージ化されている業者の場合、費用は抑えられるのですが、個別の要望を聞いてもらえない場合があります。あるいは、個別の要望には追加料金が発生するなど、かえってコストがかかってしまうケースもあるのです。
内装にこだわって差別化を求めたい場合は、どの程度まで要望に細かく対応してくれるかなども打ち合わせ時に確認しておきましょう。また、工事終了後のアフターフォローがあるかどうか、どこまでフォローしてもらえるかも業者によって変わってくるため、事前に確認しておくと安心です。
歯医者の内装工事で気になるQ&A
最後に歯医者の内装工事に関する気になる質問をまとめて紹介していきます。ここまでの記事を読んで、まだ疑問が残っているという方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 内装工事を行う流れは?
- 見積もり書で確認しておくべきところは?
順番に解説していきます。
内装工事を行う流れは?
歯科医院の内装工事は、大まかに以下のような流れで行われます。
1 | 軽量鉄骨・ボード工事 | 診察室、待合室、トイレなどの各部屋を区切ります |
2 | 建具工事 | 窓や扉などの建具を取り付けます |
3 | 造作工事 | ユニット用の配管工事の床上げや、受付カウンター、歯科技工ルームなどの工事を行っていきます |
4 | 内装仕上げ工事 | 壁にクロスや壁紙、床に床材を張っていきます |
5 | 家具・什器工事 | 歯科機器以外の家具の設置をします |
6 | 電気設備工事 | 照明器具の設置、分電盤やコンセントの設置、配線工事などを行います。LAN配線、Wi-Fiルーターなども設置します |
7 | 空調換気設備工事 | エアコン、換気扇などの空調機器、換気設備の配管を設置します |
8 | 防災設備工事 | 火災報知器と連動する感知器(煙感知器、熱感知器など)を設置します |
見積もり書で確認しておくべきところは?
見積もり書では、希望した内容が全て反映されているかを確認しましょう。最初に提示された金額だけで判断をすると、後から追加でコストがかかってしまうケースもあります。それを避けるためにも、各項目に何が含まれているかを細かく確認する必要があるのです。
先ほども解説した通り、複数の業者に見積もりを依頼すれば、各項目の適正価格、費用を下げられる項目も見えてきます。見積もり内容が1社だけが異様に安い、高いなど、相場とズレている場合は特に注意が必要です。
まとめ
近年歯医者では、コンセプトがしっかりと定められていて、求めるターゲット層に合わせた居心地の良い内装デザインが求められている傾向です。しかし、患者のことだけを考えて内装デザインを考えると、スタッフが働きにくいデザインになってしまうリスクもあります。
患者、スタッフの両方の視点から見て、使いやすく落ち着くような内装デザインにすると良いです。
これらのデザインを取り入れた上で歯科医院としての機能性もある内装を作るとなると、さまざまな専門知識が必要になります。実績のある内装業者を探している方は、ぜひ山吉吉田をご利用ください。工場・医療施設・福祉施設・福祉施設・一般家庭の内装工事が得意で、施工後のアフターフォローも行っております。ぜひ、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。