バリアフリーの改修工事で減税されるには?対象の工事や条件を解説
2023/03/01
コラム

高齢者や障害を持った方に優しいバリアフリー住宅は、日本の高齢化が進んでいくとともに、広く普及しています。しかし、住宅の増改築には多くの費用が必要です。「今は金銭的に余裕がないから我慢しよう」「改修にかかる費用をもっと抑えたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。

実は、バリアフリーを目的とした改修には税金の優遇制度があり、知っていればお得に工事を行えるのです。そこで今回の記事では、バリアフリーの改修工事やその減税制度について詳しく解説していきます。

この記事を読めば、バリアフリー改修工事について理解できるだけでなく、暮らしやすい住宅をより安価に手に入れる方法が分かるようになるでしょう。

バリアフリーの改修工事とは

バリアフリーの改修工事とは高齢者や障害を持った方を含む、住居者全員が安全で快適に暮らすことを目的とした工事です。足腰が弱った方のために手すりを取り付けたり、車いすを使用する方のために通路の拡張をしたりと、改修の種類は多岐に渡り、入居者の特徴によって必要な工事の内容が異なります。

バリアフリーの改修工事は、建物内での事故を減らし、高齢者や障害を持っている方の自立した生活の助けになります。そのため、介護者を含めた入居者全員の負担が減り、より健康的な日常生活を送ることができます。

バリアフリーの改修工事でよくある内容

高齢者や障害がある方の自立を目指すバリアフリー改修工事ですが、身体にハンデのある方にとって過ごしやすい空間はそれぞれ異なります。押さえておくべきさまざまなポイントもあるため、まずはどのような点に着目してリフォームするべきか知る必要があるでしょう。

そこでここからは、バリアフリー改修工事でよくある内容について紹介していきます。

  • 手すりを設置する
  • 段差をなくす
  • ドアをスライド式にする
  • 床の素材を変更する
  • 設備を変える
  • 間取りそのものを変更する

それぞれ見ていきましょう。

手すりを設置する

手すりの設置は、特に足腰の弱った高齢者に必要な工事です。病院や介護施設ではもちろん、高齢者が住んでいる住居にも手すりは多く設置されています。手すりを設置する目的は、大きく分けて次の3つです。

  • 移動の補助
  • 立つ、座るなどの、動作の補助や姿勢の安定
  • 事故の防止

手すりは多くの場合、玄関、廊下、階段、トイレ、浴室などに設置されますが、他にも動きにくかったり転倒の危険があったりする場所には、できるだけ手すりを設置しましょう。また、身体にハンデがある方の動線や背丈などを考慮した上で、適切な位置に手すりを配置することも大切です。

段差をなくす

段差があると、つまずいたり、転んだりする原因になります。特に、高齢者は転倒したときに骨折しやすいため、段差が原因で意外と大きな事故につながってしまう可能性も少なくありません。

また、車いすを利用している方にとっては、小さな段差も移動を妨げる障害になります。そのため、バリアフリーを目的とした改修では、段差をなくす工事が行われることも多いです。

段差をなくす工夫には、主に以下のようなものが考えられます。

  • スロープを設置する
  • すりつけ板を設置する(小さなスロープを作るための楔型の板)
  • 式台を設置する(段差が大きいところに設置される踏み台)
  • 段差解消機(昇降機)を設置する

段差は日常のいたるところに存在しており、段差ごとに高さや幅が異なるため、それぞれに適した対処法を選びましょう。

ドアをスライド式にする

開き戸だとドアを開閉するために必要なスペースが大きいため、車いすにドアをぶつけてしまったり、何度も前後に動いたりしなければならず、移動が負担になります。一方、スライド式の引き戸であれば、開閉のために必要になるスペースが小さいため、最小限の動きでドアを開け閉めして移動することが可能です。

また、ドアを作るとどうしても段差ができてしまいますが、上吊り引き戸であれば下にレールを敷く必要がないため、段差もなくスムーズに移動できます。段差につまずいたり引っかかったりする心配がありません。

バリアフリーを目指すのであれば、開き戸よりも引き戸の方が適しているでしょう。

床の素材を変更する

バリアフリー化のためには、床の素材も適切なものに変えるのが望ましいです。例えば、床材に滑りやすい素材が使われていると転倒の原因になります。コルクなどの、滑りにくくクッション性のある床にすれば、転倒やケガのリスクを抑えることが可能です。

また、車いすや杖を使用する方が居住している場合には、床材の耐久性にも十分配慮する必要があります。

例えば、畳などの柔らかい材質の床は、車いすや杖によって簡単に傷ついてしまいます。

床が傷むと、つまずいたり、引っかかったりする原因になるので、安全な環境とはいえなくなるでしょう。バリアフリー改修工事では、より安全な床材に変更するのも選択肢の一つです。

設備を変える

住宅に備え付けられている設備を変更すると、生活しやすくなる場合もあります。例えば、トイレは立ったり座ったりする動作が大きく、足腰が弱っている方にとっては危険な場所の一つです。

そのため、身体を支えるための設備を導入する、立ったり座ったりを比較的容易にできる洋式トイレにするなどの対策をすると良いでしょう。

さらに、注意が必要な場所としてはお風呂場も挙げられます。お風呂場は滑りやすい上に、入浴するためには浴槽を跨ぐ動作が必要になるので、事故が起こりやすい場所です。バリアフリーにするためには、浴槽の高さが比較的低いものを選んだり、床を滑りにくい材質に変えたりといった工夫が必要になるでしょう。

また、冬場に起こりやすいヒートショックを防ぐために、浴室や脱衣室に暖房設備を導入することも大切です。他にも、押しやすいようにスイッチの大きな照明に変更する、車いすでも使いやすいキッチン設備を導入するなどの方法も挙げられます。

間取りそのものを変更する

生活の質を改善する手段として、間取りそのものを変更することも挙げられます。具体的には、頻繁にトイレに立つ方のために寝室とトイレの位置を近くしたり、介護が必要な方を見守りやすい部屋の配置に変えたりなどです。

また、車いすを利用する方のために廊下を広くする、ドアを大きくする、洗面所や脱衣所のスペースを広くするといった対策をすると、車いすを利用する本人だけでなく、介護をする方の負担も減らせます。

2階以上の高さのある建物では、できるだけ生活に必要な空間を1階に集中させたり、エレベーターを設置したりするなどして、階段の上り下りを減らすことも重要です。間取りを変更する際には、 生活に必要な動線を短くする、介護者にとって作業しやすいスペースを確保するなどの工夫をすると、介護者にとってもストレスの少ない空間になります。

 

「自宅をバリアフリーにしたいけど、どのような工事をすれば良いのか悩んでいる」という方は、高齢者住宅などで実際に取り入れられている構造を取り入れてみるのも良いでしょう。高齢者住宅で取り入れられているバリアフリー構造のポイントについては、「高齢者住宅の内装ではバリアフリーが大切!設備ごとのポイントを解説」の記事を参考にしてみてください。

バリアフリーの改修工事は減税されることもある

バリアフリー改修工事を行った場合、減税措置を受けられることがあります。工事を行う人や工事の目的、内容など、一定の要件を満たしていれば、所得税や固定資産税から減額されるのです。

 

【所得税が減額される場合】

改修後、居住を開始した年の所得税が一定額控除される制度です。控除額は以下の金額から算出されます。

  • バリアフリー改修工事の標準的な費用の額
  • バリアフリー改修工事と併せて行う増築、改築、その他一定の工事に要した費用の額

 

【固定資産税が減額される場合】

固定資産税が減額される場合は、工事完了年の翌年度分の固定資産税から1/3が減額されます。

改修工事で所得税が減額される条件

先ほども少し解説した通り、所得税の減額措置を受けるためには、一定の条件を満たさなければなりません。条件を満たすには、そもそもバリアフリー改修工事とは具体的にどういった内容の工事を指すのかを理解した上で、税金控除を受けるための要件を知ることが大切です。

そこでここからは、減税の対象になる工事内容や条件について詳しく解説していきます。

適用要件

所得税の減税措置を受けるための主な要件は、下記の通りです。

  1. 自らが所有する家屋にバリアフリー改修工事をしている
  2. 平成26年4月1日から令和5年12月31日までの間に生活の本拠として使用している
  3. 改修工事が完了してから6ヶ月以内に住居している
  4. 控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下である
  5. 改修工事後の住宅の床面積が50平方メートル以上であり、その床面積の1/2以上が自己の住居として使用されている
  6. バリアフリー改修工事にかかる標準的な費用の額が50万円を超える額である
  7. 工事費用の1/2以上の額が自己の住居部分のための費用である

しかし、これらの用件を満たしていれば良いというわけではありません。さらに、以下の条件のいずれかに該当する人物が工事を行う必要があります。

  • 50歳以上の方
  • 要介護または要支援の認定を受けている方
  • 所得税法上の障害者である方
  • 65歳以上の高齢者や、上記した2や3に該当する方と同居している方

これらの条件を満たしている人は、減税の手続きを検討してみてください。次で、減税の対象になるバリアフリー改修工事について解説するので、合わせて見ていきましょう。

対象となるバリアフリー改修工事

減額対象となるバリアフリー改修工事としては、主に以下の内容が挙げられます。

  • バリアフリーを目的とした通路または出入口の幅の拡張工事
  • 階段の勾配を緩和する工事
  • バリアフリーを目的とした浴室の改良工事
  • バリアフリーを目的としたトイレの改良工事
  • 手すりの取り付け工事
  • 段差の解消工事

先ほど紹介した適用条件に当てはまり、さらにこれらの工事を行うことを検討している人は、減税の申告をしてみましょう。申告方法は次の通りです。

申告方法

バリアフリー改修工事に伴う減税の申告は、確定申告をする際に行います。確定申告をしたことがない人は慣れていないかもしれませんが、一般的には確定申告書に必要になる各種提出書類を添付して、お住まいの地域の税務署に提出するという流れです。

提出書類

所得税の減税を申告する際に、確定申告書に添付する書類は以下の通りです。

  • 住宅耐震改修特別控除額・住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書
  • 増改築等工事証明書
  • 家屋の「登記事項証明書」などで床面積が50平方メートル以上であることを明らかにする書類
  • 介護保険の被保険者証の写し

これらの書類を忘れずに持っていきましょう。

改修工事で固定資産税が減額される条件

バリアフリー改修工事による固定資産税の減額が認められるには、所得税の減税と同様にいくつかの条件を満たす必要があります。減税の対象になるバリアフリー改修工事とはいったいどのようなものか、どういった建物に適応される減税なのか、申告方法、必要な提出書類についてもそれぞれ詳しく解説していきます。

適用要件

固定資産税の減税措置を受けるための主な要件は、下記のような内容が挙げられます。

  1. リフォームする家屋が築10年以上経過している
  2. 改修後の床面積が50㎡以上280㎡以下である
  3. 店舗などと併用している建物の場合、床面積の1/2が住居用である
  4. 工事費用が税込み50万を超えている(補助金控除後の金額)
  5. 令和6年3月31日までに工事を完了する
  6. 申告時に1から3に該当する方が住居している

さらに、これだけではなく、以下の条件のいずれかに該当する人物である必要があります。

  • 65歳以上の方(改修工事が完了した日のよく年の1月1日時点)
  • 要介護または要支援認定を受けている方
  • 障害者の方

これらの要件を満たしている方は、次の対象となるバリアフリー改修工事も合わせて見ていきましょう。ただし、固定資産税が減税される要件は地域によって異なるため、詳しく知りたい方は自分の住んでいる地域のサイトなどを確認してみてください。

対象となるバリアフリー改修工事

固定資産税の減税対象となるのは、主に以下のような内容の工事です。

  • バリアフリーを目的とした通路または出入口の幅の拡張工事
  • 階段の勾配の緩和
  • バリアフリーを目的とした浴室の改良工事
  • バリアフリーを目的としたトイレの改良工事
  • 手すりの取り付け工事
  • 段差の解消工事
  • バリアフリーを目的とした扉の取り換えや、扉の開閉を簡単にする器具の設置
  • 床を滑りにくくする工事

対象となるバリアフリー改修工事も地域によって違いがあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。

申告方法

工事完了日から3ヶ月以内に、改修工事をした家屋がある市区町村の窓口に、必要書類または必要書類の写しを提出します。提出は郵送で行うことも可能です。やむを得ない事情があって期限内に提出できない方は、3ヶ月が経過した後でも減税してもらえる可能性があるので、相談してみてください。

提出書類

固定資産税の減税を申告する際に、必要になる書類は以下の通りです。

  • 固定資産税減額申告書
  • 適用対象者の証明書
  • 補助金などの額が明らかな書類
  • バリアフリー改修工事の内容が確認できる書類

こちらも、各自治体によって必要書類の内容が異なる場合があります。詳しくは、改修工事をした家屋がある市区町村のホームページなどを確認してみてください。

バリアフリーの改修工事で贈与税が非課税になる場合も

バリアフリー改修工事のためのお金であれば、贈与しても税金を払わずに済む場合があります。個人から110万円以上の財産を取得した場合は、その財産に対して税金がかかるのが一般的です。

しかし、耐震や省エネ、バリアフリー住宅を得るための資金であれば、最大1000万円まで非課税にできます。父母や祖父母などの直系尊属から住宅資金の贈与を受けた場合、主に以下の要件を満たしていれば非課税になります。

  • 令和4年1月1日から令和5年12月31日までに贈与された
  • 贈与を受けた年の贈与を受けた方の合計所得金額が2000万円以下
  • 断熱性能や耐震性、バリアフリー性能が基準以上の住宅を得るための資金の贈与

まとめ

バリアフリー改修工事とは、高齢者や障害を持った方が暮らす住居を住みやすくするための工事です。主に行われる工事内容としては、手すりを設置する、段差をなくす、ドアを変えるなどが挙げられます。

バリアフリー改修工事は減税対象になる場合があるので、改修工事を行う方は適用要件や対象となるバリアフリー改修工事を、記事を参考に確認してみてください。

近年では日本全体の高齢化が進んでいることもあり、ますますバリアフリーに配慮した住宅が求められています。過ごしやすい住宅を作ることは、そこに住む人が自立して健康に暮らせる時間を長くすることにつながるでしょう。

バリアフリー改修工事を検討している方は、ぜひ山吉吉田にご相談ください。高齢者住宅や老人ホームなどの工事経験が豊富で、バリアフリー改修工事にも丁寧に対応いたします。お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

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