病院の修繕工事では何を意識すべき?工事のタイミングや費用も解説
2023/03/31
コラム

病院は清潔感や安心感が求められるため、古い状態のままでいると患者からのイメージが悪くなってしまう可能性があります。古くて汚い病院にはあまり通いたいと思いませんよね。

そこで今回は、病院の修繕工事について解説していきます。病院が修繕工事で意識すべきポイントやタイミング、費用などを詳しく紹介していくので、病院の修繕工事を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

病院の修繕工事を行うメリット

冒頭で解説した通り、病院には清潔感や安心感が求められるので、古い病院は患者からのイメージダウンにつながる可能性があります。では、病院の修繕工事をすることで、患者からのイメージが良くなる以外にはどのようなメリットが得られるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

患者からのイメージが良くなる

まずは、患者からのイメージが良くなるという点から解説していきます。病院はお店ではないのだから内装はあまり患者にも意識されていないと思う方もいるかもしれませんが、実は患者は病院の見た目や設備にも注目しているのです。

実際に、2020年に厚生労働省で行われた調査では、下記のような結果が現れています。

引用:厚生労働省 2020年受療行動調査(概数)の概況

 

このように、「建物がきれい・設備が整っている」という点から病院を選ぶ方もいます。もちろん、交通の便や医師・看護師の態度なども重要視されていますが、同じような条件の病院が近くに揃っていた場合は、病院の内装によって選ばれる可能性もあるでしょう。

きれいな病院というのはそれだけでイメージが良くなり、患者から選ばれることもあるので、病院が古くなっている場合は修繕工事を検討してみてください。

建物の安全性が高くなる

1981年6月に、国土交通省は「震度5強程度の地震で軽微な損傷、震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊は免れる」という新耐震基準を設けました。新耐震基準は現在でも指針とされており、この基準を守るように義務付けられています。

しかし、1981年以前に建てられた病院では、この基準を満たしていない建物も多いのです。1980年前後に建てられた病院は現在、築40年程度経過していることになるため、建物の修繕が求められる時期といえるでしょう。病院の修繕とともに建物の強度を改善し、地震が起きても安心できる病院にしてください。

また、現在ではさまざまな建物でバリアフリーが求められています。修繕と同時にバリアフリーに対応した設備を充実させれば、高齢者の方も通いやすくなり、より多くの患者を受け入れやすくなるでしょう。

スタッフの働く環境が良くなる

病院の修繕工事では、スタッフの働きやすい環境を提供できるようになるというメリットもあります。修繕工事を行う際には、患者だけでなくスタッフのことも考えてデザインをすると良いです。

例えば、スムーズに患者を診察室に案内して診察するための動線が確保できているか、病室やナースステーションの配置は時間がかかったり移動しにくかったりしないか、扱いやすい最新の医療機器が取り入れられているかなどが挙げられます。

患者のことを考えるのはもちろんですが、スタッフが働きやすい環境になればストレスがなくなり、余裕を持って患者に接することができるようになります。より良い職場を作るのは患者への良い印象にもつながるので、働くスタッフの視点からも考えてみてください。

病院の修繕工事を行うタイミングや期間

古い病院は修繕工事を行う必要があると解説しましたが、どのタイミングで修繕工事を行うのが良いのでしょうか。病院の建物が古くなってくると、見た目にも機能にもさまざまな欠陥を抱えるようになってしまうため、早めの修繕が大切です。ここでは、具体的なタイミングや期間について紹介していきます。

修繕工事のタイミング

病院の修繕工事のタイミングとしては、築30年から40年程度が経過したタイミングが良いとされています。築30年から40年程度経つと、内装でも外装でも設備が寿命を迎え始めるため、まとめて一新するのがおすすめです。

「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定めている耐用年数は、病院用の(鉄骨)鉄筋コンクリート造は39年となっているため、30年が経過したあたりから検討をする病院が多くなっています。

新耐震基準が定められた1980年前後に建てられた建物は、現在築40年程度となっているので、検討のタイミングとして良いでしょう。

修繕工事にかかる期間

修繕工事にかかる期間は、病院の規模や工事範囲などによって異なりますが、大体1年から2年ほどになります。病院の修繕工事は、病院を休んで一気に工事を進めるといった手法を取ることができません。診療や入院を続けられる範囲で、少しずつ修繕工事を繰り返していく必要があるため、どうしても期間が長くなりやすいです。

外装や内装が劣化してから修繕工事を始めるのではなく、少し早めの段階から始めたほうが良いでしょう。

病院の修繕工事にかかる費用

修繕工事は大体1坪10万から20万程度で、そこから医療機器に関する費用は別途必要になるというのが、一般的な費用相場です。修繕のタイミングで水回りの位置を変更するなどの大きな工事を行う場合は、さらに費用が高くなります。

医療機器を最新のものに買い換える場合は数千万単位でかかるため、あらかじめ医療機器を買い換えるのにどのくらいの費用が必要になるのかも調べておきましょう。その上で、修繕工事にかけられる費用を洗い出し、業者選びをすると良いです。

補助金を活用すると費用が抑えられる

病院の修繕工事はどうしても大規模なものになることが多いため、費用も高くなりがちです。費用が原因で修繕工事になかなか踏み出せないという方は、補助金を活用してみてください。

補助金にはさまざまな種類があり、条件に当てはまれば大幅に費用が抑えられます。病院の修繕工事で利用できる補助金制度は下記の通りです。

  • へき地診療所施設整備
  • 過疎地域等特定診療所施設整備
  • へき地保健指導所施設整備
  • 研修医のための研修施設整備
  • 臨床研修病院施設整備
  • へき地医療拠点病院施設整備
  • 医師臨床研修病院研修医環境整備
  • 離島等患者宿泊施設施設整備
  • 産科医療機関施設整備
  • 死亡時画像診断システム施設整備

例えば「へき地診療所施設整備」は、へき地医療の確保及び臨床研修医の研修環境の充実などを図るためのもので、2分の1の補助率となっています。このように、条件に当てはまれば費用を抑えられる可能性があるので、当てはまるものがないか確認してみてください。

それぞれの補助金の条件や補助率については、「病院の改修工事のポイントを解説|注意点や費用を抑えるコツとは」の記事で解説しております。

病院の修繕を行う際の注意点

ここまで、病院の修繕工事にかかる期間や費用などを解説しましたが、ここからは実際に修繕工事を行う際の注意点について見ていきましょう。

  • 修繕費は経費にならない場合がある
  • 工事中の収益が減少する可能性がある
  • 工事中の騒音や振動が気になる

それぞれ詳しく解説していきます。

修繕費は経費にならない場合がある

修繕に関する費用は、経費として計上できるものが多いですが、中には資産の購入とみなされるものもあります。資産の購入として認められてしまうと、耐用年数に応じて減価償却する必要があるなど、さまざまな点に注意しなければいけません。

どこまでが経費としてのラインになるかというと、「原状回復のための工事」は修繕費になり、経費として認められます。これが、病院の資産価値を高めるためのものと思われると、資産の購入になってしまうのです。

経費のラインを自分で客観的に見ながら評価するのは難しいですが、原状回復のために必要な措置であると証明できれば経費として認められます。見積書や工事の説明資料などは捨てずに取っておきましょう。

工事中の収益が減少する可能性がある

工事中、診療を制限する必要があったり一時的に診療を中止したりすると、どうしても工事中の収益が減少してしまいます。そのため、修繕工事を行う際には、収益を下げないための対策が重要です。

例えば、診療に必要なスペースや設備を確保しながら少しずつ工事を進めていく、一時的に別の物件を借りて診療を行うなどの方法が考えられます。スタッフの雇用のことを考えても継続した診療は欠かせないので、工事中の収益を落とさないための対策を考えつつ、修繕工事を行うようにしてください。

工事中の騒音や振動が気になる

工事中は振動や騒音が起こりやすく、入院患者や診察中の患者のストレスになってしまう可能性があります。特に、工事を行っている病院で工夫しながら診療を続けていく場合は、患者への周知や診察・治療を妨げない対策が欠かせません。

できるだけ工事現場から遠い場所で診察をする、騒音や振動が緩和される場所に入院患者を移動させるなど、患者にストレスを与えない方法を検討してみてください。

また、工事現場の近くで精密な検査機器を使用すると、検査結果に影響が出る可能性も考えられます。検査を行わない日に工事を行うなど、うまく調整しながら工事を進めていきましょう。

病院の修繕工事に関する法律

最後に、病院の修繕工事に関する法律について解説していきます。病院の修繕工事にはさまざまな法律が絡むため、知らないまま工事を行うと、トラブルにつながる可能性も考えられます。

  • 建築基準法
  • 消防法
  • 医療法

それぞれの法律について、見ていきましょう。

建築基準法

病院は、建築基準法で定められている「特殊建築物」に当てはまる建築物です。特殊建築物は特殊な設備・構造を持った建物のことで、学校や劇場、工場なども含まれます。特殊建築物では、立地条件や防火設備、構造などのさまざま事項が制限されているため、病院の所有者は特殊建築物の条件を把握した上で修繕工事を行わなければいけません。

また、特殊建築物である病院の修繕工事を行う際には、工事を開始する前に「建築確認申請を提出し、建築主事の確認を受け確認済証の交付を受けなければならない」とされています。病室の配置変更程度であれば提出をする必要はありませんが、大規模な修繕工事を行うのであれば、忘れずに提出をするようにしてください。

消防法

消防法は、火災の予防や国民の保護、火災による被害の軽減などを目的に制定されている法律です。消防法における設備の基準としては、有床診療所と無床診療所でそれぞれ下記のように定められています。

有床診療所というのは、4人以上の患者を入院させるための施設を有する診療所のことです。病院がこの条件に当てはまる場合は、有床診療所の条件を確認するようにしてください。4人を下回る場合は、無床診療所の条件になります。

 

有床診療所の設置基準
消化器 延面積に関わらず設置する
スプリンクラー 診療科目によって違いはありますが、延面積3,000㎡以上
自動火災報知設備 延面積に関わらず設置する
消防機関へ通報する火災報知設備 延面積に関わらず設置する

 

有床診療所の設置基準
消化器 150㎡以上
スプリンクラー 6,000㎡以上
自動火災報知設備 延面積300㎡以上
消防機関へ通報する火災報知設備 500㎡以上

 

医療法

医療法は医療提供体制について定められており、病院や診療所、助産所などでは特に重要視される法律です。医療を受ける患者の保護や適切な医療の提供を目的として、さまざまな規定が定められています。

一例としては、下記のような規定が挙げられます。

 

設備 要件
病室  ・地階または3階以上の階には設置しない

・主要構造部を耐火構造とする場合は3階以上に設置できる

精神病室の設備 ・精神疾患の特性を踏まえた適切な医療の提供

・患者の保護のために必要な方法

感染症病室・結核病室 ・病院(診療所)の他の部分や外部に対して感染予防のための遮断、その他必要な方法
調剤所 ・採光及び換気を十分にして清潔を保つ

・冷暗所の設置

・感量10㎎のてんびん、500㎎の上皿てんびん、その他調剤に必要

な器具の設置

火気を使用する場所  ・防火上必要な設備

引用:病院・診療所の構造設備等の基準

 

ここで紹介しているのはあくまでも一例です。実際には、さらに詳細に定められているため、修繕工事を行う際にはよく確認しておきましょう。

まとめ

患者から清潔感や安心感が求められる病院では、修繕工事は欠かせません。患者は病院選びをする際に、外装や内装、設備にも注目するため、きれいな状態で保っていることは、患者からのイメージ向上にもつながります

また、修繕工事を行うことで建物の強度が上がって安全性を確保できるようになる他、スタッフに働きやすい環境を提供できるなどのメリットもあります。しかし、病院の修繕工事は規模が大きく、費用も高くなりやすいです。修繕工事で失敗しないためには、業者選びに注意しなければいけません。

病院の修繕工事の業者選びにお悩みの方は、ぜひ山吉吉田をご利用ください。病院や工場などの特殊建築物の工事に携わった実績が豊富なので、ご要望に合わせた修繕を行うことが可能です。ご相談はお問い合わせフォームから受け付けております。

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